平成15年度青森県畜産環境保全指導事業
 
土壌固化材及びシートを利用
した簡易堆肥盤の作成方法
青森県農林総合研究センター 畜産試験場
主任研究員 上原子俊之

 
1. ねらい
 
   建設現場で使用される土壌固化材と防水シートを利用し、排汁の漏出と泥寧化を防止することにより、堆肥盤としての機能を確保する。
 
 
2. 基本構造
3. 堆肥盤作成作業上の留意点
 
  1) 土壌水分の適正化
    土壌の水分含量は簡易堆肥盤作成上、最も重要なポイントの一つである。 最適水分含量は35%~40%(軽く握って塊となる)程度であり、これより低い場合は転圧中にひび割れが生じたり、仕上がりが悪くなる。また高すぎる場合は、十分な転圧ができない。
  また、最適土壌水分状態を維持するため、固化材混合~堆肥盤予定地への搬入~転圧に要する時間をできるだけ短縮することが重要である。
  2) 固化材と土壌の均一な混合
       土壌と固化材はできるだけ均一に混合する。固化材と混合されない土壌は、転圧後はがれたり、十分な硬度が得られなくなる。ロータリーで混合する場合、 固化材の色がなくなるまで混合する。(通常3~4回掛け程度)
 
  3) 転圧による硬度の向上
       転圧は2トン以上のローラーで3回程度実施する。
 
 
  4)土羽の設置
      土羽は、堆肥盤からの排汁の漏出を防止するものである。しかし、特に土羽を転圧する場合は曲面を転圧することになるため、ある程度のひび割れ、仕上がりの悪さは避けられない。
 
 
4.事前の準備
 
  1) 堆肥盤の規模・構造、設置基数
  経営規模、使用形態等(完熟堆肥置場として利用、発酵させることを目的として利用など)を考慮し、1基当たりの面積、必要基数を決定する。
  ① 面積・必要基数
  1基当たりの面積は、上部に通気性シートを利用することを考慮すると、その作業性からあまり大きくしない方が望ましい。
  ② 構 造
    ◎固化材層厚
      固化材層の厚さは20cm以上に設定するのが望ましい。畜産試験場での試験結果では、設定20cmとして作成、完成した固化材層の厚さは転圧による土壌の緊密化により16cm程度となったが、トラクター等の走行には問題ない硬度が得られている。
 ただし、実際に使用する場合は、堆肥移動時の作業機械により堆肥盤面が削られ、消耗していくことが予想される。このため、固化材層は最低20cmとして設定する。
    ◎排 水
      排水管の設置は、底部(防水シート上)及び堆肥盤上部の2カ所設置 するのが基本となる。
 底部排水管からの排水は僅かであるが、現段階では長期間の使用の際の影響が解明されていない。また、堆肥盤上部の排水管設置は、発酵する際の水分の排出に有効であるが、これの処理が必要となる。
 
  2) 必要資材の発注・準備
   表に一般的な必要資材等を示したので、これを参考として準備する。
 
  3)予定地の準備
    規模、構造等が決定したら、予定地の状況を確認する。この際、排水対策のため、予め1%程度の傾斜地があれば、これを利用するのが便利である。また、雑草等はできるだけ除去することが必要で、場合によっては表土をはぎ取る。この作業と同時に傾斜を設定しても良い。
 いずれにしても、掘削作業前に傾斜を設定しておくことが望ましい。
  表
必要資材・作業機等
数 量 備    考
固化材 必要量 土壌1m3当たり100kgが目安
下敷シート 1枚 防水シート
上掛シート 1枚 通気性シート
排汁対策資材 1式 暗渠管、塩ビ管、接着剤、排水タンク等
ローラー 1台 2トン、リース対応
トラクター 2台 1台はロータリー、バケット付き、他1台はバケットのみ
スコップ・トンボ 必要量 4~5人の組作業が適当
区画用水糸、杭等 必要量  
 
 
5. 実際の作業例
 
  1)堆肥盤の設計、作業計画
  ① 設計図(1基作成)
  ② 必要土量計算
    堆肥盤部分=6m×16m×0.2=19.2m3
土羽部分 =1m×0.15m/2×42m=3.15m3
                        計 22.35m3
  ③ 作業計画
    ◎ 隣地で固化材混合、堆肥盤、土羽を一回で施工する場合
  2)予定地の整地
  3の3)参照
 
  3)作業の流れ
作業内容
使用機械等
ロータリー・バケット付トラクター
バケット付トラクター
 
   
スコップ、シート押さえ用
土嚢、排水資材一式
ロータリー、スコップ、トンボ
 
   
ロータリ-、バケット
 
   
バケット付トラクター2台
                  スコップ
 
   
ローラー シート
 
   
バケット
 
 
6. その他の注意事項
 
  1)実際に使用する場合は、排水管の設置の有無にかかわらず(特に本堆肥盤を 発酵施設として利用する場合)、水分吸着材、暗渠管の目づまり防止等のため、もみ殻等を敷設するのが望ましい。
 
  2)本施設は、毎日堆肥を堆積するような構造ではない。すなわち、一度に堆肥盤が満杯となるような使用方法に限定される。
  このため、堆肥盤上部に排水管を設置しない場合でも、雨水の排水対策が必要である。
 
  3) 固化材については約7年の耐用年数とされているが、使用方法により変動する可能性がある。
 
  4)本施設はあくまでも一時的な貯蔵施設であることから、これと他施設を組み合わせてふん尿処理対応を図る必要がある。