地域と共存した資源循環型大規模畜産への挑戦

―『三方良し』(消費者・生産者・地域社会)の商人道精神に根ざして―

有限会社 金子ファーム(かねこふぁーむ)

 

2.経営・生産活動の内容

 

金子ファームは、八甲田山を望む雄大な自然環境の中、ホルスタイン種、交雑種、日本短角種を約8300頭飼養し、約130haの広大な用地を有する県下一の大規模生産農場である。

金子ファーム

創業以来、『ただ利益を上げるのが目的でなく、消費者に安全・安心な牛肉を提供する』という基本理念の下、「安全・安心へのこだわり」「環境保全への配慮」「資源循環型畜産への挑戦」「地域社会との協調・融和」を社是として、安全・安心にこだわった国産牛肉の生産を続けている。

また、牛づくりだけでなく、無償で農業の持つ多面的機能の重要性と生命の尊さを学習させる場を設けている外、文化財の保全にも取り組んでおり、地域社会に密着した農業経営を実践し、その貢献度は大きく他の模範となっている。

 

1)安全・安心へのこだわり

金子ファームの看板は、オリジナルブランド「健・育・牛」である。「健康ですくすく育つこと=安全・安心につながる」をコンセプトに、北海道の契約農場から健康な素牛(生後6~7か月)を導入し、その後、金子ファームのオリジナルで、抗生物質を一切使用しない配合飼料と自家産のデントコーン、県産稲わらなどの粗飼料で肥育し、安全・安心でおいしい国産牛肉に仕上げている。平成20年には、全国枝肉共進会ホルスタイン種去勢の部で農林水産大臣賞を受賞し、「味・品質・安全性」が認知され更なる増頭要請がある。

また、最近ではビーフジャーキーやレトルトカレーなど加工品製造にも取り組んでおり、商品は地元の道の駅などで販売しているほか、ネットでの販売も行っている。

加工品製造

 

2)環境保全への配慮

「自社の発展は地元住民の理解と協力なくしてはありえない」との理念から、これまで最新の糞尿処理施設を積極的に設置するなど、環境保全に取り組んでいる。

生産した完熟堆肥は、堆きゅう肥品評会で優秀賞を受賞するなど品質の高さが認められ、また運搬も行っていることから県内各地域の野菜農家や果樹農家から注文が多い。特に日本一の生産量を誇るリンゴやニンニク農家からの引き合いが強く、青森県が進めている「日本一健康な土づくり運動」にも大いに貢献している。

耕種農家へ

 

3)資源循環型畜産への挑戦

平成18年からは資源循環型畜産の確立に挑戦している。具体的には、競走馬牧場跡地に自家生産した堆肥を投入し、デントコーン栽培に着手。収穫後はラップサイレージとして「健・育・牛」に給与するリサイクルの流れを確立した。

さらに、平成20年からは約7haで、牛糞堆肥のみの無農薬で資源作物である菜の花の栽培を開始。油を搾り「牧場のなたね油」の商品化や、菜の花だけで作ったハチミツを生産。さらに、油の搾りかすは、牛の飼料にするなど、『牛→土→作物(デントコーン、菜の花)→牛』といった徹底した資源循環型畜産の構築を図っている。

今後は、菜の花廃食油や加工業者の廃食油を燃料化し、農耕用機械に活用するなどバイオマス資源の利活用を通じた環境にやさしい更なる資源循環型畜産の構築に挑戦していくとしている。

金子ファームの資源循環型畜産への挑戦!

 

4)日本短角種の生産


日本短角種の生産

安全・安心へのこだわりと資源循環型畜産への挑戦の延長線上の取組として、平成19年から北東北特産の日本短角種の飼育を始めた。日本短角種は、粗飼料の利用性が高く、粗食に耐え、放牧しながらでも肥育可能。飼料高騰など、厳しい経営環境の中で特に魅力を感じるとして、今後とも増頭していく考えである。

1.地域の概況
2.経営・生産活動の内容
3.地域農業や地域社会との協調・融和のための取組み
4.今後の目指す方向性と課題
 
 
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