1 出 品 財
出品区分: 放牧部門(公共牧場)
草種・品種: オーチャードグラス(フロンティア)、ペレニアルライグラス(フレンド)、 メドウフェスク(リグロ)、シロクローバ(フィア)
出品ほ場面積: 9,143a(放牧地 8,817a、兼用地 326a)
2 地域の概況等
つがる市屏風山牧場は青森県西部に位置しているつがる市の最北部にあり、日本海に面した屏風山と呼ばれる丘陵地帯に立地している。
つがる市の農業は産出額でみると米(43%)が大半を占め、次いで畜産、野菜(メロン、スイカなど)、りんごの順になっているが、近年、肉用牛繁殖雌牛の飼養頭数が増加傾向にある。
また牧場を運営するつがる市屏風山畜産組合は平成8年に地域の肉牛農家を組合員として設立され、牧場管理のほか、肉用牛の改良・増殖等の業務を行っている。。
3 経営の概況等
(1)経営形態:肉用牛繁殖公共牧場
(2)組合の構成員、放牧頭数及び飼養頭数
平成8年畜産組合設立当初の構成員は17名、現在は20名
年度 |
H5 |
H7 |
H17 |
H19 |
放牧頭数 |
97 |
243 |
252 |
225 |
飼養頭数 |
167 |
303 |
316 |
322 |
注)頭数:成雌牛、育成牛、子牛含む
(3)主な施設、機械等の所有状況
区分 |
棟数・面積・台数 |
施設等 |
看視舎117.86㎡、乾草貯蔵施設4棟1,800㎡、農具庫336㎡、
牛衡舎5.06㎡、牛衡機1t用、乗降施設5基、門扉28ケ所、牧柵
15,425m |
機械 |
ディスクモア:1台、ホイールローダー:1台、ブームスプレーヤー:
1台、家畜運搬車:1台、管理用トラック:1台、飼料カッター:1台、
看視用バイク:1台、高圧洗浄機:1台 |
(4)収支概況
収入 15,456千円(事業収入9,520千円、事業外収入5,936千円)
支出 14,655千円(事業費用14,655千円)
4 経営及び技術面での取組
(1)悪条件での草地管理
つがる市屏風山牧場は、もともと土壌が砂質土で表層土が浅いうえに、日本海からの強風 による表層土飛散や、夏季間の干ばつなどにより極めて悪条件の下にあり、毎年草が不足するなど肉用牛の増頭を図る上で課題となっていた。
そのため、昭和41年に村営牧場として草地の改善に努めたのを契機に、その後数回にわたり草地整備事業により客土を行うなど草生の回復に努めた結果、現在では年間200頭を 越える放牧が可能な放牧場となり、肉用牛振興の中核施設となっている。
(2)集約管理型の放牧管理
放牧地の中心部に追い込み柵と水飲み場を設置し、牧区を放射線状に配置している。放牧牛は1群30頭程度とし、3~7日毎にで転牧することにより、放牧地の効率的な利用 と放牧牛の省力管理を実施している。また、放牧牛を朝と夕方に水飲み場に集まるように馴
致した結果、頭数の確認や観察が容易となり人工授精や疾病の早期発見・治療を可能としている。
この結果放牧頭数は平成5年に比較して倍増している。(平成5年97頭→平成19年225頭)
特に、平成5年から5年間で実施された津軽西部区域畜産基地建設事業により、比較的規模の大きい組合員7戸が牧場敷地内に畜舎を移転し、経営規模を拡大したことから、飼養頭数の多くが牧場内に集約されることになり、放牧や市場出荷、人工授精、登録等の業務が効率化されている。
(3)牧場の持つ側面的機能の活用と食育教育ゾーン
市内唯一の公共牧場として牧場の持つ美しいみどりの景観と放牧風景が市民の憩いの場として親しまれているほか、幼稚園や小学生の遠足、ふれあい体験学習のために開放しており、地域社会との協調の場となっている。
年度 |
回数 |
人数 |
対象 |
内容 |
H12 |
3 |
140
150
120
|
村内小学校(3・4年生)及び保護者
近隣幼稚園
村内小学校(1・2年生)及び保護者
|
畜産体験学習及び地域交流会
虫取り遠足
JA主催「大地とふれあい学習」 |
H13 |
1 |
150 |
近隣幼稚園 |
虫取り遠足 |
H14 |
1 |
80 |
近隣幼稚園 |
虫取り遠足 |
H15 |
2 |
2
153
|
村内中学校
近隣幼稚園
|
体験学習
虫取り遠足 |
H16 |
1 |
174 |
近隣幼稚園 |
虫取り遠足 |
H17 |
4 |
25
100
3
37
|
地元小学校(1クラス)
近隣幼稚園
地元小学校(校長他)
地元小学校及び保護者・PTA
|
授業の一貫として視察
虫取り遠足
遠足の一貫として牧場・牛舎の確認
遠足の一貫として牧場・牛舎の視察及び休憩 |
H18 |
1 |
40 |
近隣幼稚園 |
虫取り遠足 |
H19 |
1 |
80 |
近隣幼稚園 |
虫取り遠足 |
5 今後の経営の方向
(1) 草地の生産性向上
客土等による草地整備を行ってきたとはいえ、厳しい条件下での草地管理が強いられるなかで、より一層草地の生産性を向上させるため、関係機関の指導を得ながら、土壌分析データに基づく効率的な肥料散布や堆肥散布等により、さらに土壌の保水力を高めていく。
(2) 肉用牛の主産地形成
平成13年に認定和牛改良組合が設立されて以来、若手を中心として先進地研修、県外からの優良な基礎雌牛の導入、人工授精の推進など全国的な視野に立った改良と子牛づくりに取り組んだ結果、最近の子牛価格は全国平均を大きく上回っている。このようなことから、組合員の増頭意欲は旺盛である。
今後は、増頭意欲を具体化していくとともに、より一層の優良牛の生産拡大と新たな仲間づくりにより、名実ともに本県の肉用牛主産地の形成を目ざしていく。
(3) 新たな仲間(耕種農家)への波及効果
当地域は、耕地面積に占める水田面積の割合が73.5%(県内1位)で、伝統的に水田のウエイトが高い地域である。しかし、生産調整の拡大と米価が年々低下する状況の中
で農家所得の確保を図るためには、米以外の新たな作目の振興が課題となっている。
このような中で、肉用牛生産は大いに期待できる部門である。組合としては肉用牛振興を推進する上で、牧場が果たす役割や牧場景観、また組合員の成功事例が種農家に波及していくよう働きかけるなどして新たな仲間づくりを進めていく。
(4) 畜産組合の経営
現在、組合収入の約40%がつがる市からの受託費で賄われているが、今後の市の厳しい財政状況を考慮すると、可能な限り市に依存しない組合経営の健全化を図る必要がある。
このため、放牧料金の見直しも視野に入れながら、第一義的には組合員の増頭意欲を背景として、検討中である新たな放牧地の造成による放牧面積の拡大と草地の維持管理
技術の向上により、さらに放牧牛の増頭を進めていく。
(5) 地域社会との協調
牧場の「緑資源」は、山村の美しい景観を成し、うるおいとやすらぎを与えている。これまでも地域の学童を中心として学校行事に積極的に開放してきたが、今後は、畜産に対する地域社会の理解醸成と貢献を図ることが重要であることから、より広く一般にもPRし、開放していくため、「ふれあい牧場」として環境面で整備を進めていく。
≪ 受賞者の言葉≫
この度、第12回全国草地畜産コンクールにおいて栄えある賞を頂くことができまして大変うれしく心から感謝申し上げます。コンクールに向け関係機関や青森県草地畜産協会の皆様には大変お世話になり厚くお礼申し上げます。
私たちの組合は、津軽西部畜産基地建設事業により今の牧場が整備されたのを契機として、平成8年にこの牧場を利用する地域の肉用牛農家17戸で設立しました。
この地域は水田、野菜(スイカ、メロンなど)との複合経営として昔から肉用牛が飼われていましたが、整備される前の牧場は施設が不十分の上、しかも砂質土壌のため極端に草が少なく牧場の収容頭数が少なかったため、増頭したくても牛を増やせないような状況にありました。それが整備されてからは安心して放牧できるようになり、また県の黒毛和種の改良事業の成果により県産子牛の評価が高まり、家畜市場での子牛販売が好調に推移してきたこともあり、繁殖牛が順調に増えるようになりました。
このように、この地域の肉用牛は牧場を核として増頭し、農家経営の大きな柱となっており、改めて牧場を整備して頂いた行政機関の方々に感謝を申し上げる次第です。
牧場の運営については、現在、組合員が交代で牧場に毎朝出向いて発情看視をしているほか、3週間ごとの衛生検査は全組合員で行うなど、組合員全員が一丸となって取組んでいます。
しかしながら、当牧場は建設時に客土したものの、依然として砂質土壌と日本海からの強風による表層度の飛散や旱魃など厳しい自然条件下で草地管理を強いられている状況にあります。
配合飼料が高騰している今日、飼料自給率をさらに高めていく必要があり、このためにも関係機関の指導を得て草地の生産性の維持に努めていくほか、牧場として機能の充実を図り、一層の優良牛の生産拡大や牛飼いの仲間づくりを進め、当地域が名実ともに肉用牛の主産地としての評価を目指し取組んでいく所存ですので、関係者の皆様には今後ともご指導、ご支援を頂きますようお願い申し上げます。
|