【全般】
障害者を対象に「農」を中心とした生活訓練、職業訓練による自立、社会参加を目的に社会福祉事業を実施している中で、肉用牛という大型の家畜を飼育し、その繁殖、育成、肥育という一連の作業を取り入れている。
また、子牛、種畜の売却や肥育牛の出荷を事業活動としており20年以上継続している。「農作業部門」の中には稲作、育苗、畑作、粗飼料生産も展開され、家畜の堆きゅう肥の草地還元、地域での稲わらと堆肥交換をしながら資源循環型農業も目指している。
【稲作部門】
自給分の米を生産するほか、地域農家からの委託を受け育苗や苗の販売もしている。
最近では減反制度の切り替え等で育苗枚数が減ってきているものの、廉価で質が良いとの評価を貰っている。
【肉用牛飼育部門】
肉用牛の飼育が、主な事業活動となっている。当初1頭の寄贈から始まったが、現在の飼養規模は地域としても比較的に大きく、繁殖牛78頭、肥育牛13頭、子・育成牛44頭の計135頭となっている。畜産班は和牛1班から4班(各7名)に分かれるほど希望者が多く、毎日の作業に熱心に取組んでいる。
牛は自家生産の他外部導入も行っており、血統、体型的に優れている。
施設での生産牛は、性格温和で飼いやすく地域の模範となっている。その理由としては、一日中でも牛のブラッシングをするなど牛の担当になった園生が愛情を一心に込め飼育しているためと考えられる。
前園長、坂本嘉隆氏の長年の経験から積み上げた言葉を借りると「園生とのふれあいで牛の気持ちが優しくなりいい性格、肉質に育つ。アニマルセラピーと言う言葉の中には、牛によって人が安らぐだけでなく、人によって牛が安らぐという側面もある事を体現している。牛を飼い始めてから園生が笑顔を絶やさなくなった。また、担当の牛を持たせてもらえる事があこがれであり、担当を決め世話をすることで責任感が生まれる。牛に愛情を与えると牛から愛情が返ってくることを、牛が園生に非常によくなつく事で実感している。」とのことである。
そんなところから、「牛づくりは人づくり」という農工園のモットーが生まれた。
施設や設備だけではない究極のアニマルウェルフェアと言えるかも知れない。
共進会や枝肉出荷、共励会へ積極的に出品しており、その結果が園生の励み、自信となっている。その他の主な取組としては、牛舎は電柱などの廃材を使った自家労力による低コスト畜舎の建築、水田(1ha×4区)放牧による労働力削減と農山村の景観保持、調教と触れあいを兼ねた「牛の散歩」なども行っている。
【地域交流】
近隣農家との作業協力だけでなく、社会参加として夕涼み会、カラオケ発表会、クリスマス会やお茶会を実施している。
芝生、植裁等を環境整備し園内のレクレーションだけでなく、老人クラブや学童のキャンプ場として開放しており、中高年ボランティアスクールや保育所、体育振興会へも場所を提供している。
毎年、十和田市民と障害者の集い「ゆめ色フェステバル」(障害者が行う学芸会のようなもの)を開催。千人近くが集まり、障害者も市民も一緒になって寸劇や餅つき大会などを楽しんでいる。
【生活訓練】
肉用牛飼育部門、水稲部門の他に家庭科部門を設置し、共同生活の中で、掃除、洗濯、調理、後かたづけに取り組んでいる。
【スポーツ】
園生の体力増進とレクレーションを兼ねてフリスビー、ソフトボールチームをつくり、大会に参加している。また、レクレーションとしてボーリング大会も開催している。
【特記事項】
事業全体としては、大型家畜である肉用牛の飼育を中心的な事業活動としており、同様な社会福祉施設としては希有な事例であると思われる。
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